<活動の背景>
私たちは長い時間をかけて創られてきた自然と共存した生活や地域の自然そのものの大切さをあまり意識せず、便利なライフスタイルを求め周囲の自然環境を変えてきてしまった。
近年になって、いろいろな生物の外来種のことが少しずつ問題化されてきている。植物の場合は、外国から輸入されたりして定着した外来種を、明治時代から「帰化植物」と呼んでいる。園芸用・観賞用として、法面などの緑化や飼料として、いろいろな場面で有益に使われてきた。その中には野生化したものも多くあったが、拡大の仕方もゆっくりであり、わが国固有の種とうまく共存してきたために、長い間特に問題視されずにきた。しかし、戦後からの急速な経済発展に伴い、交通網が発達し輸入される物資の量も増加し、一度侵入してしまったものが拡大する範囲やスピードも早くなってきた。その結果、毎年多くの新しい帰化植物が確認され増え続けて、1998年には既に1300種以上が確認されている。
平成16年に「外来生物法」が制定され、多くの外来生物種が侵略的特定外来種として指定され、これを期に生態系保全の必要性を感じた市民は様々な活動を始めている。ところが、一般市民にとっての自然についての認識は里山などの遠いところで守るものであり、自然環境の変化は極地や熱帯で起こっていることで、実は身近な自然が知らないうちに変化しているという自覚が少ない。身近な生活の場でもある庭先や公園などの自然の中にも問題が存在するということに気づかず、環境問題についての危機感を身近で感じているとはいえない。
植物についても、野生化してしまう危険性を確認せず次々に新しい種を植えてよいのかどうか。報道される種だけが問題ではなく、まだ注目されていない外来植物の中で私たちの周囲に目立ち始めたものや拡大のスピードが速いものについても早急に分布の調査や拡散の実態を把握し、できるだけ早く防除する必要があると思われる。
一度壊れた自然は、長い時間をかけないと元に戻らない。生物多様性が失われてしまうのはなぜかを考える機会を提供することが必要と思われるが、今までは一方的な情報の提供が行われてきた。市民の環境意識の高まりは感じられるが、認識の隔たりは大きく折角の機会を逃しかねない。
今回の調査では、身近な外来植物が実はあまり知られていないことや、その分布が把握されていないなどの現状の問題を解決するため、一般市民を対象としてこれらの身近な外来植物の分布調査を実施する。身の回りの自然に目を向けることを市民に意識してもらいたい。
また、観察会・セミナーを実施して、専門的な一部の人々の知識ではなく、様々な情報を共有することで自然環境の保全や環境問題の解決に繋げたい。